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初心者必見!DX事例15選とスムーズに進める必須ポイント5つ

DX(Digital Transformation・デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術やデータを活用してビジネスのプロセスや組織のあり方などを変革し、企業競争力を高める取り組みのことです。

DXは、現在、以下のような背景から注目されており、多くの成功事例があります。

DXに取り組む事例が増えている背景

  • 多数の企業の基幹システムが老朽化し、保守管理の負担が増大しデータ活用が困難になる可能性が高い
  • グローバル化やインターネットの普及などに伴う消費者ニーズの多様化に対応する必要がある
  • 自然災害や感染症流行などの際にも事業継続する上でデジタル化が欠かせない

以上のような背景から、日本におけるDX推進についても、中小企業や自治体など幅広い分野で、すでに多くの成功事例が存在しています。

DXの事例|中小企業の例

  • 属人化していた管理設定をデジタル化し、生産性向上を実現
  • 自動化やクラウドを活用してプロセスを可視化し生産性をアップ
  • IoTなどを活用し、新たな顧客向けソリューションを開発
  • 生産・営業・人材育成など重点分野を設定してデジタル化し生産効率アップ
  • 社長自らが中心となって結成した「チームIoT」主導のもと、IoTによる変革を行うなどの取り組みを実施

DXの事例|大企業の例

  • 可視化された情報を共有し、複数の部門で連携して効率化
  • デジタル技術を創薬プロセスに活用し、高度な個別化医療を実現
  • DXを推進することでビジネスモデルを進化
  • 顧客起点・全体最適・全員参加というスタイルで業務改革
  • DXによって、さまざまな革新的ビジネスモデルを創出

DXの事例|自治体の例

  • インターネット上で地域の課題などについて専門家に意見を聞けるサイトの運用
  • 研修やツール体験会実施による、自治会や町内会のデジタル化を支援
  • 3D都市モデルにさまざまな災害情報を重ねて、誰もが確実に把握できる防災情報を作成
  • オンラインの診療や服薬指導で医師不足問題を解決
  • 九州電力送配電(株)と連携し、IoTで子どもの見守り体制を構築

このように成功事例も多数出ている反面、

  • DXを推進しているが、効率的に進まない
  • データを収集したものの、活用方法がわからなくなってしまった

など、課題を抱えてしまうケースもあることに、注意が必要です。

DXを成功させるには、事例を踏まえて、自社がDXを成功させるために押さえるべきポイントを把握しておくことが欠かせません。

この記事では、中小企業・大企業・自治体など参考にしやすい身近なDX事例や、DXのよくある課題とその対策ポイントについて解説していきます。

この記事の内容

  • DXの事例|①中小企業編
  • DXの事例|②大企業編
  • DXの事例|③自治体編
  • 事例から学ぶDXのよくある課題と対策

後半では、DXの先行事例からどのように成功ポイントを読み解くとよいのかについてもご紹介していますので、これから事例研究をしていきたいケースでもお役立ていただけるでしょう。

今回ご紹介する内容をチェックしておくことで、DXの代表的な成功事例を把握し、自社のDX推進に活かすことができるようになります。効果的に無駄なくDXを推進するためにも、ぜひ、ご一読ください。

1.DXの事例|①中小企業編

ここでは、IPAの「中小規模製造業者の製造分野におけるDX事例」及び経済産業省による「DXセレクション」の事例から、身近で参考にしやすい日本における中小企業のDX事例をご紹介します。

DXの事例|①中小企業編
プラスチック製品製造業 属人化していた管理設定をデジタル化し、生産性向上を実現
産業機械・自動車部品製造業 自動化やクラウドを活用してプロセスを可視化し生産性をアップ
計器製造業 IoTなどを活用し、新たな顧客向けソリューションを開発
金属切削加工業 生産・営業・人材育成など重点分野を設定してデジタル化し生産効率アップ
電気機械器具製造業 社長自らが中心となって結成した「チームIoT」主導のもと、IoTによる変革を行うなどの取り組みを実施

以下では、各事例の内容をもう少し詳しく見ていきましょう。

1-1.プラスチック製品製造業のDX事例

プラスチック製品を製造する企業では、DX推進によって品質の可視化や指示を具体化することで生産性を向上させています。同社では、プラスチック製品を製造するプロセスに、IoTネットワークを活用したシステムを導入しました。

これまでは、機械の設定管理は勘や経験など属人的な要素に頼る部分が多く、実績データを探すのにも時間を要する状況でした。しかし、製造プロセスのDXを推進したことでデータ設定時間を大幅に短縮し、生産性の向上を実現しました。

事例の基本情報
業種 プラスチック製品製造業
従業員数
(2023年2月21日現在公表情報)
9名(アルバイト含む)
主な事業 プラスチック製品製造
実施前の課題
  • ペーパーベースで機械設定情報を管理していたので、過去の設定情報を探すのに時間がかかる
  • 勘や経験など属人的な要素に頼る部分が多い
実施内容 ツールを用いてデータを蓄積し、それに基づき設定するよう変更
実施後の成果 機械設定時間を大幅に短縮

1-2.産業機械・自動車部品製造業のDX事例

産業機械や自動車部品の設計・開発や、金属の複雑・高精度なプレス加工などを手がける産業機械・自動車部品製造業では、製品の製造環境や設備の稼働状況を可視化・自動化することで、生産性の向上を実現しました。

DX推進以前は時間を要していた製造スケジュールの構築などが、同社の内製した「IoTGO(製造業向け IoT クラウドサービス)」によって自動化され、効率化がはかれたということです。

さらに、IoTシステムの導入を境に、従業員から業務改善やシステム改善の提案が積極的に出されるようになるという効果もありました。

事例の基本情報
業種 産業機械・自動車部品製造業
従業員数
(2023年2月21日現在公表情報)
352名
主な事業
  • 自動車用及び産業用部品の設計や開発
  • 金型製作
  • プレス加工
  • 溶接
  • 組立
  • 機械加工
  • 表面処理
実施前の課題 製造スケジュールの構築などに、非常に時間がかかっていた
実施内容 内製した「IoTGO(製造業向け IoT クラウドサービス)」導入
実施後の成果 製造スケジュールの構築が自動化でき、変更も容易になった

1-3.計器製造業のDX事例

圧力計をはじめとする機器類の製作を行う老舗計器製造メーカーでは、DXを推進することで新規事業の開拓を成功させました。

主要な事業である圧力計器の市場が下降傾向にあることなどを把握した同社では、現在の事業を活かしながら、新規事業を展開できないか検討していました。そこで、IoTを圧力計と組み合わせることで、新規マーケットに進出することに成功しました。

同社は、実証実験やDX人材の確保・補助金の活用などの取り組みが、DX成功のポイントとしています。

事例の基本情報
業種 計器製造業
従業員数
製造分野DXガイド 中小規模製造業の製造分野におけるDXのための事例調査報告書 (ipa.go.jp)掲載情報)
18名
主な事業 圧力計、差圧計、液面計、温度計や医療機器などの製造・販売
実施前の課題 主要な事業である圧力計器の市場が下降傾向にある
実施内容 既設アナログ式計器を IoT化
実施後の成果 新規マーケットに進出することに成功

1-4.金属切削加工業のDX事例

精密加工やセンシング制御など、高度な技術を持つ機械加工関係の事業を展開する金属切削加工業の企業では、「Intelligence Factory 2030」という2030年までに実現したいあり方を定義し、総合的なDX推進に取り組みました。

具体的には、工場・生産業務プロセス・開発・営業・人財育成・海外展開の6つの観点から、DXを推進しました。データを可視化し社内で共有できる体制が構築できたことで、新たな事業展開などにつながったということです。

事例の基本情報
業種 金属切削加工業
従業員数
(2023年2月21日現在公表情報)
280名
主な事業
  • 加工技術
  • FSW評価試験サービス
  • 金属積層造形材料評価試験サービス
  • 材料試験サービス
  • 被削性評価試験サービス
  • 残留応力計測ソリューションサービス
  • FSW教育支援サービス
実施前の課題 他社との差別化がはかりにくい
実施内容
  • 工場のデジタル化や自動化を推進
  • センシング技術の高度化を実施
  • 製造に関するデータを蓄積し活用
実施後の成果
  • 高度な加工ができるようになり、売上がアップした
  • 多角的な事業展開ができるようになった

1-5.電気機械器具製造業のDX事例

発電所や鉄道・浄水場などで利用される配電盤の設計開発を、主な事業として展開する配電盤製造業の企業の取り組み事例を見てみましょう。同社では、自社開発したシステムによってDXを推進し、製造プロセスや在庫の可視化・製造過程の半自動化などを行い、効率化を実現しています。

さらに、社長自らが中心となって結成した「チームIoT」主導のもと、IoTによる変革を行うなどの取り組みを実施することで、DX人材の育成や業務改善につなげていることが特徴です。

事例の基本情報
業種 電気機械器具製造業
従業員数
(2023年2月21日現在公表情報)
145名
主な事業
  • 配電盤の製造、供給
  • 発電システム(所内電源装置)
  • 電鉄システム(電線保護装置)
  • コンピュータ周辺機器
  • CTスキャナの制御装置 など
実施前の課題 生産管理などに労力がかかる
実施内容 原価管理、調達管理、工程管理、工数管理に関するデータを連携
実施後の成果 誰でもどこでも情報が参照できるようになり、データ活用が進んだ

2.DXの事例|②大企業編

ここでは、経済産業省の「DX銘柄2022」選定企業の取り組み事例を中心に、大企業のDX推進の状況をご紹介します。

DXの事例|②大企業編
センサー関連の製造業 可視化された情報を共有し、複数の部門で連携して効率化
医薬品メーカー デジタル技術を創薬プロセスに活用し、高度な個別化医療を実現
ガス・電気の小売業 DXを推進することでビジネスモデルを進化
食料品メーカー 顧客起点・全体最適・全員参加というスタイルで業務改革
情報・通信業 DXによって、さまざまな革新的ビジネスモデルを創出

以下では、各事例の内容について、ご紹介していきます。

2-1.センサー関連の製造業のDX事例

さまざまなセンサー類を企画・開発しているセンサー関連の製造業を営む企業では、センサーとIoTを融合させて付加価値を生み出すとともに、複数の部門で連携して可視化された情報を共有し、効率化を実現しています。

業務システムや⽣産システムの刷新など、グループ全体でDXに取り組んでいるのが特徴です。また、代表取締役社⻑を責任者としたDX管理体制を整備し、管理委員会を定期的に開催するなど、社内の連携をとるための仕組みづくりもしっかりと行っています。

事例の基本情報
業種 センサー関連の製造業
従業員数
製造分野DXガイド 中小規模製造業の製造分野におけるDXのための事例調査報告書 (ipa.go.jp)掲載情報)
約600名
主な事業 各種センサーの企画・開発、販売など
実施前の課題 社会情勢の急激な変化に対応し経営基盤を強化する
実施内容
  • センサーとIoTを活用しビジネスモデルを変革
  • グローバルでの業務標準化などを実施
  • ITリテラシーの向上、人財育成を全社で実施
実施後の成果
  • 販売機会の増加
  • 事業領域の拡大

2-2.医薬品メーカーのDX事例

大手医薬品メーカーの企業では、デジタル技術を創薬プロセスに活用しています。DXによって、医薬品の提供スピードアップや、個々の患者に最適な新薬開発など、高度な個別化医療の実現に向けた取り組みを行っているのです。

具体的には、

  • AIやデジタル技術を使うことで、より効果的な新薬を開発する
  • ロボティクスで治験などを自動化し効率化する
  • 多くのデータを解析し、治療効果やQOLを高める

といった取り組みを行っています。

事例の基本情報
業種 医薬品メーカー
従業員数
(2023年2月21日現在公表情報)
7,771名
主な事業 医薬品の研究、開発、製造、販売および輸出入
実施前の課題 トレンドの変化に対応し経営基盤を強化する
実施内容
  • AIやデジタル技術を使うことで、より効果的な新薬を開発する
  • ロボティクスで治験などを自動化し効率化する
  • 多くのデータを解析し、治療効果やQOLを高める
実施後の成果 医薬品の提供スピードアップや、個々の患者に最適な新薬開発に適した環境構築が進んだ

2-3.ガス・電気の小売業のDX事例

ガス・電気の供給といったエネルギー事業と、自社開発したシステムなどを提供するプラットフォーム事業を中心に手がけるガス・電気の小売業の企業では、DXを推進することで、ビジネスモデルを進化させています。

具体的には、ガス使用量や配送車両の位置情報などのデータ管理を行うことで効率化し、プラットフォーム事業の拡大を目指しています。

また、デジタル技術を取り入れることで、発電と電気の需要について効率よくバランスをとるスマートハウスを実現し、スマートシティの構築を目指すことも取り組みの一つです。このような社会問題への解決策を提示できるビジネスモデルを構築することで、企業価値の向上を実現することができるでしょう。

事例の基本情報
業種 小売業
従業員数
(2023年2月21日現在公表情報)
1,775名
主な事業
  • LPガス事業
  • 都市ガス事業
  • ガス小売事業(コミュニティーガス事業)
  • 高圧ガス事業
  • 電力事業
  • 生活関連事業
  • リフォーム事業
  • 総合設備工事
実施前の課題 エネルギー供給を取り巻く環境の変化に適応する必要がある
実施内容 ガス使用量や配送車両の位置情報などのデータ管理を行うことで効率化するなどさまざまな施策を実施
実施後の成果 プラットフォーム事業の拡大が進行中

2-4.食料品メーカーのDX事例

調味料・食品・冷凍食品からヘルスケアまで幅広く事業を展開する食料品メーカーの企業では、顧客起点・全体最適・全員参加というスタイルで、業務改革を行っています。異なる部署間でも同じような基準で業務を最適化することで、在庫の最適化や物流業務の効率化などを実現しているのです。

さらに、これまでの食品開発などで培った技術にデジタル技術を融合させることで、自動献立提案システムなど、おいしく健康的な食生活をプロデュースするビジネスモデルの構築も行っています。

事例の基本情報
業種 食料品メーカー
従業員数
(2023年2月21日現在公表情報)
34,198名
主な事業
  • 食品
  • アミノサイエンス
実施前の課題 変化する社会情勢に対応し、食と健康の課題を解決する必要性
実施内容
  • 異なる部署間でも同じような基準で業務を最適化
  • 自動献立提案システムなど、おいしく健康的な食生活をプロデュースするビジネスモデルの構築
実施後の成果
  • 業務効率化を実現
  • 新たな企業価値の創出

2-5.情報・通信業のDX事例

大手電機通信事業者である情報・通信業の企業は、DXによって、さまざまな革新的ビジネスモデルを創出しています。その一例は、以下のとおりです。

PayPay
  • キャッシュレス決済のサービス
  • 2018年10月からサービス開始し、2022年3月時点で登録者数は4,679万人、加盟店数は366万ヶ所以上となっている
HELPO
  • 従業員の健康管理をサポートすることができるアプリ
  • 24時間365日、医療の専門家に健康相談できるほか、さまざまな機能がある
MONET
  • モビリティプラットフォーム
  • 車両の移動情報や人の流れ・交通情報などのデータを集約・分析し、より使いやすく効率的な交通サービス提供に活かせる
事例の基本情報
業種 情報・通信業
従業員数
(2023年2月21日現在公表情報)
49,581名
主な事業
  • 移動通信サービスの提供
  • 携帯端末の販売
  • 固定通信サービスの提供
  • インターネット接続サービスの提供
実施前の課題 誰ひとり取り残さないデジタル社会の実現に向けて次世代社会基盤を創造する必要性
実施内容
  • キャッシュレス決済のサービス提供
  • 従業員の健康管理をサポートすることができるアプリ開発
  • モビリティプラットフォーム提供
実施後の成果 革新的なビジネスモデルを創出

3.DXの事例|③自治体編

各自治体においても、地域活性化や住民生活の向上など、さまざまな目的でDXを推進しています。その中から、以下の5つの事例を見てみましょう。

DXの事例|③自治体編
栃木県 インターネット上で地域の課題などについて専門家に意見を聞ける「とちぎデジタルハブ」
北海道札幌市 研修やツール体験会実施による、自治会や町内会のデジタル化を支援
熊本県玉名市 3D都市モデルにさまざまな災害情報を重ねて、誰もが確実に把握できる防災情報を作成
愛知県豊根村 オンラインの診療や服薬指導で医師不足問題を解決
福岡県粕屋町 九州電力送配電(株)と連携し、IoTで子どもの見守り体制を構築

上記の5つの事例について、もう少し詳しくご紹介していきます。

3-1.栃木県のDX事例

栃木県では、地域における課題を解決するための協働・連携をDXでサポートする「とちぎデジタルハブ」というサイトを、令和3年10月に構築・オープンしました。

同サイトでは、解決したい課題がある地域住民などと、解決策を提案できる相手をマッチングすることが可能です。解決策を提示できる相手は課題の内容によって異なり、民間企業や専門家・行政など、適切な相手とマッチングできます。

課題解決に向けた前向きな議論をサポートする「とちぎデジタルハブ」は、地域活性化をする上で有効なツールと言えるでしょう。

事例の基本情報
自治体 栃木県
人口
(2023年2月21日現在公表情報)
1,921,575人
実施前の課題 地域の課題をスムーズに解決する手段が十分でない
実施内容 解決したい課題がある地域住民などと、解決策を提案できる相手をマッチングするサイト「とちぎデジタルハブ」開設
実施後の成果 課題解決に向けた実証が開始し、地域活性化に向けた新たな取り組みも始まっている
自治体公式ホームページ 栃木県公式ホームページ

参考:総務省「地域社会のデジタル化に係る参考事例集

3-2.北海道札幌市のDX事例

北海道札幌市では、自治会や町内会のオンライン開催を支援する取り組みを行いました。スケジュールが合わず特定の場所に集まるのが難しい、感染症対策で集まりにくい、といったケースでも、スムーズに自治会・町内会を開催できるようにするためです。

同市では「リモート会議実施研修会」や「電子回覧板導入モデル事業」などを実施し、ソフト・ハードの両面からリモートでの自治会実施を支援しました。

事例の基本情報
自治体 北海道札幌市
人口
(2023年2月21日現在公表情報)
1,969,939人
実施前の課題 自治会や町内会で集まるのが難しい地域の課題がある
実施内容 「リモート会議実施研修会」や「電子回覧板導入モデル事業」などを実施
実施後の成果 令和3年度中に7地区において電子回覧板が導入
自治体公式ホームページ 札幌市公式ホームページ - City of Sapporo

参考:総務省「地域社会のデジタル化に係る参考事例集

3-3.熊本県玉名市のDX事例

熊本県玉名市では、誰にでも直感的にわかりやすい災害リスク情報の提供を目指し、3D都市モデルにさまざまな災害情報を重ねて可視化しました。

このような取り組みを行った背景には、

  • 災害が大規模化・頻発化する中で、災害リスクを前もって把握しておく必要性が高まっていること
  • 外国人、高齢者、障がい者など、誰もが正確な情報をつかんでおく必要があること

などがあります。

避難シミュレーションVRなどもあわせて作成されており、地域の防災強化に有効なDX推進の事例と言えるでしょう。

事例の基本情報
自治体 熊本県玉名市
人口
(2023年2月21日現在公表情報)
28,350人
実施前の課題 外国人、高齢者、障がい者などが災害リスク情報を把握しにくい
実施内容 3D都市モデルにさまざまな災害情報を重ねて可視化
実施後の成果 誰にでも直感的にわかりやすい災害リスク情報を提供可能になった
自治体公式ホームページ 玉名市公式ウェブサイト

参考:総務省「地域社会のデジタル化に係る参考事例集

3-4.愛知県豊根村のDX事例

愛知県豊根村では、医師不足問題を解決するなどの目的から、オンラインの診療や服薬指導のサービスを提供しています。

豊根村には薬局がなく、医師の高齢化や人員不足が課題となっていたからです。自動車の運転に不安がある高齢者などであっても、端末さえあればオンラインで診察などが受けられます。

山間部や医師不足の地域などの医療環境改善を、DXで実現した事例と言えるでしょう。

事例の基本情報
自治体 愛知県豊根村
人口
(2023年2月21日現在公表情報)
1,017人
(あいちの人口 令和2年国勢調査 402564.pdf (pref.aichi.jp)
実施前の課題 村には薬局がなく、医師の不足・高齢化も進んでいる
実施内容 オンラインの診療や服薬指導のサービスを提供
実施後の成果 自動車の運転に不安がある高齢者などであっても、端末さえあればオンラインで診察などが受けられるようになった
自治体公式ホームページ とよね村 Toyone Village Official Site

参考:総務省「地域社会のデジタル化に係る参考事例集

3-5.福岡県粕屋町のDX事例

福岡県粕屋町では、電力会社と連携し、IoTで子どもの見守り体制を構築する取り組みを行っています。同町では、町内の小学校や電柱など100ヶ所以上に基地局を設置し、町内のすべての小学生に見守り端末を配布しているということです。

これによって、子どもの位置情報を記録することができるので、子どもの安全を確保することができます。行方が分からなくなった場合などの緊急時は、警察に位置情報を提供し、早期解決に役立てることも可能とのことです。

事例の基本情報
自治体 福岡県粕屋町
人口
(2023年2月21日現在公表情報)
48,914人
実施前の課題 地域全体での子どもたちの見守りを強化する必要性があった
実施内容 町内の小学校や電柱などに基地局(102箇所)を設置した上で、町内の全小学生に見守り端末機を配布した
実施後の成果 見守り端末機を持っている子どもの現在地を保護者などが簡単に把握できるようになった
自治体公式ホームページ 粕屋町公式トップページ

参考:総務省「地域社会のデジタル化に係る参考事例集

4.事例から学ぶDXのよくある課題への対策5つ

DXを推進する際にありがちなのが、「効率的に進まない」「うまく事業化できない」などの課題に直面し、思うように効果が得られない事態です。

そこで、ここでは、よくある課題に有効な対策を5つご紹介します。

事例から学ぶDXのよくある課題と対策

【対策ポイント①】 組織で一体となって推進する
【対策ポイント②】 DX人材を活用する
【対策ポイント③】 スモールスタートで検証する
【対策ポイント④】 事例研究結果を自社の事業で使えるように落とし込む
【対策ポイント⑤】 既存の事業などとの連携を意識する

できるだけスムーズにDXの成果を出したいという場合は、ぜひ参考にしてみてください。

4-1.【対策ポイント①】組織で一体となって推進する

DXをスムーズに進めて効果につなげるには、組織で一体となって推進することが大切です。各部署でバラバラにDXを推進していても、効率的に進まないからです。特に、経営陣は積極的に関わり、率先して社内全体の意識を変えていく必要があります。

DXで成果を出すには、組織全体に影響するシステムの導入や、業務の進め方の変更、組織再編などが必要です。また、資金の投資も必要になってくるでしょう。そのため、影響力と決定権のある経営陣とともに、組織全体で横断的に取り組むことが欠かせないのです。

この対策が有効な課題の例

  • 各部署でDXを推進しているが、効率的に進まない

4-2.【対策ポイント②】DX人材を活用する

DX推進できちんと成果を出すには、DX人材を活用することが欠かせません。

DXの進め方やデータ活用などについて専門知識を有するDX人材がいることで、

  • 収集したデータの効果的な活用方法がわかる
  • 収益性の高い事業化の方向性について、アドバイスが得られる
  • 他社のDX事例を自社でどのように活かせばよいのか、ヒントが得られる

といったメリットがあるからです。

DX人材を確保するには、自社で育成・採用するという方法の他に、DXコンサルティングに相談するという方法もあります。

この対策が有効な課題の例

  • データを収集したものの、活用方法がわからなくなってしまった
  • 事業化の方向性がつかめない
  • 事例を読んでも活用方法がわからない

4-3.【対策ポイント③】スモールスタートで検証する

DX推進の障壁をできる限り減らすには、スモールスタートして検証してみた上で、組織全体に広げていく進め方をしましょう。

突然、組織全体でDXに取り組んでも、現場の理解が得にくく大きな抵抗にあいやすいからです。また、DXの施策は、試行錯誤する過程を通して、生産性向上に最適な方法がわかることが多いためです。

DXのプランを練ったら、まずは小さな部署や業務で実際に試してみて、効果を検証した上で展開していきましょう。

この対策が有効な課題の例

  • 思ったように生産性が向上しない
  • 現場からの強い反対にあって進まない

4-4.【対策ポイント④】事例研究結果を自社の事業で使えるように落とし込む

DXを推進して新規事業の立ち上げや市場開拓を行いたい場合は、他社の事例を研究し、自社の事業でも参考にできる部分はどこか検証した上で取り入れるようにしましょう。

成功事例を参考にすることで、事業化を成功させる重要なアイデアがつかめます。しかし、他社の事例をそのまま真似するだけでは、業務環境や人材の状況・事業や会社の規模などが異なる自社でもうまくいくとは限らないからです。

事例から、自社の事業で使えるポイントはどこか見極めるには、

  1. できる限り多くの事例を集める
  2. 各事例が成功した原因を細分化して具体的に整理してみる
  3. DX人材や専門家の意見を聞く

といった手順で検討していくとよいでしょう。

この対策が有効な課題の例

  • うまく事業化できない

4-5.【対策ポイント⑤】既存の事業などとの連携を意識する

DXを推進して新規事業などを立ち上げたい場合は、既存の事業などとの連携を意識する必要があります。これまで力を入れてきた事業や、そこで培った技術・ノウハウを最大限活かすことで、効率的に利益につなげることができるからです。

今回ご紹介した事例でも、多くの企業が、既存の事業や技術にデジタル技術を融合することで付加価値を生み出し、新たなマーケットを開拓していました。

DXがデジタル技術でビジネスモデルを変革するものであるとは言え、まったく新しいものに挑戦するのは、特に初めてDXを進めるときは、ハードルが高いものです。既存の事業など、自社の強みを可能な限り活かせるように事業化することで、スムーズに収益アップにつなげられるでしょう。

この対策が有効な課題の例

  • うまく事業化できない

ここまで記事を御覧いただいた上で、

「DXは難しそう」
「自分で調べて対応する時間がない」
「一旦、詳しい人の話を聞いたうえで判断したい」

とお考えの方は、ぜひ当社にサポートをお任せください。

5.まとめ

デジタル技術やデータを活用して、ビジネスのプロセスや組織のあり方などを変革し企業競争力を高める取り組みであるDXには、多くの事例があります。

今回は、身近で参考にしやすい事例として、日本の中小企業・大企業・自治体の実際の取り組みを合計で15件紹介しました。

DXの事例|①中小企業編
株式会社富士製作所 属人化していた管理設定をデジタル化し、生産性向上を実現
久野金属工業株式会社 自動化やクラウドを活用してプロセスを可視化し生産性をアップ
株式会社木幡計器製作所 IoTなどを活用し、新たな顧客向けソリューションを開発
株式会社山本金属製作所 生産・営業・人材育成など重点分野を設定してデジタル化し生産効率アップ
株式会社日東電機製作所 社長自らが中心となって結成した「チームIoT」主導のもと、IoTによる変革を行うなどの取り組みを実施
DXの事例|②大企業編
オプテックス株式会社 可視化された情報を共有し、複数の部門で連携して効率化
中外製薬株式会社 デジタル技術を創薬プロセスに活用し、高度な個別化医療を実現
日本瓦斯株式会社 DXを推進することでビジネスモデルを進化
味の素株式会社 顧客起点・全体最適・全員参加というスタイルで業務改革
ソフトバンク株式会社 DXによって、さまざまな革新的ビジネスモデルを創出
DXの事例|③自治体編
栃木県 インターネット上で地域の課題などについて専門家に意見を聞ける「とちぎデジタルハブ」
北海道札幌市 研修やツール体験会実施による、自治会や町内会のデジタル化を支援
熊本県玉名市 3D都市モデルにさまざまな災害情報を重ねて、誰もが確実に把握できる防災情報を作成
愛知県豊根村 オンラインの診療や服薬指導で医師不足問題を解決
福岡県粕屋町 九州電力送配電(株)と連携し、IoTで子どもの見守り体制を構築

上記のような事例を踏まえて、自社がDXを成功させるために押さえるべきポイントを把握しておくことで、無理なく無駄なくDXを推進できます。

また、DXのよくある課題への対策については、以下のとおりです。

事例から学ぶDXのよくある課題と対策

【対策ポイント①】 組織で一体となって推進する
【対策ポイント②】 DX人材を活用する
【対策ポイント③】 スモールスタートで検証する
【対策ポイント④】 事例研究結果を自社の事業で使えるように落とし込む
【対策ポイント⑤】 既存の事業などとの連携を意識する

以上のようなポイントを押さえることで、DX推進にありがちな「思ったような成果が得られない」といった事態を、回避しやすくなるでしょう。

DX推進は、消費者ニーズの多様化などに対応し、今後も競争力を維持していくために、すべての企業に必要な取り組みです。今回ご紹介した内容を参考に、DXをスムーズに進めていきましょう。

この記事を書いた人:

PlariTown編集部