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物流DXとは?課題別アイデア5選と注意点2つをわかりやすく解説

物流DXとは、物流の分野にデジタル技術を導入して業務プロセスを改善し、現状の課題解決や効率・生産性の向上をはかる取り組みのことです。

物流DXとは
デジタル技術やIoT・データなどを活用し、働き方改革を実現したりオペレーションを改善したりする取り組み

受付業務を自動化して人手不足を解消する、荷物・倉庫管理をデジタル化して倉庫の不足解消や業務のスリム化をはかるなど、多彩なアプローチがあります。

物流DXは、慢性的な人員不足や再配達・小口配送の増加に伴う非効率化など、物流業界を悩ませる課題を解決する上で有用であるという理由から、注目される取り組みです。

物流DXを推進することで、人手不足などによる大きな負担を軽減できる、働き方改革が実現するなど、さまざまなメリットがあります。

一方で、現場でDXへの理解が得られにくい、導入後の運用イメージを明確にして進めないと成果が出にくい、といった点にも注意が必要です。物流DXをスムーズに進めて成果につなげるには、メリット・注意点の両方を理解してから取り組むことが欠かせません。

物流DXのメリットと注意点
物流DXのメリット
  • 業務の効率化
  • 労働力不足の解消
  • 働き方改革の実現
物流DXの注意点
  • 現場でデジタル化への理解が得られにくい
  • 拠点ごとに業務プロセスが異なりデジタル化しづらい

この記事では、物流DXの概要・取り組むべき内容の例・メリット・注意点といった、物流DX初心者必見の内容をまとめて解説します。

この記事の内容

  • 物流DXとは
  • 【課題別】物流DXの具体的なアイデア5選
  • 物流DXを進めるメリット3つ
  • 物流DXを進めるときの注意点2つとその対応策

今回ご紹介する内容を一読しておけば、物流業界のDXについて一般的な知識を身に付けた上で、自社ではどのような取り組みをすればよいのか、検討できるようになります。

基本のポイントを押さえて物流DXを推進し、現在抱えている課題の克服や、業務の効率化などを実現させましょう。

1.物流DXとは?今必要とされる3つの理由

物流DXとは、デジタル技術やIoT・データなどを活用し、働き方改革を実現したりオペレーションを改善したりする取り組みのことです。

現在の物流業界の抱える課題の解決に効果的であるため、国土交通省が「総合物流施策大綱」などにおいて推進しています。

では、具体的にどのような課題の解決に、物流DXは有効なのでしょうか。ここでは、物流DXを正しく理解するために必ず知っておきたい、物流業界でDXが必要な理由について、確認をしておきましょう。

物流業界でDXが必要な理由

  • 労働力不足+2024年問題
  • 再配達、小口配送の増加に伴う非効率化
  • 倉庫不足の深刻化

1-1.物流業界でDXが必要な理由①|労働力不足+2024年問題

物流業界でDXが必要な理由の1つ目は、労働力不足に加え、2024年問題があるためです。

2024年問題とは、働き方改革関連法によって、物流の要ともいえるトラックドライバーの時間外労働時間に、上限ができることを指します。

物流業界の2024年問題

  • 2024年4月1日から
  • 時間外労働の上限が年960時間に規制される

出典:「2024年問題」解決に向けて(国土交通省)

上記は、もともとトラックドライバーの長時間労働が問題視されていたため、時間外労働時間に上限規制が設定されたものです。

しかし、現状でさえ労働力が不足しがちで長時間労働になっていることを考えれば、上記の規制が適用されることで、さらに労働力不足が加速することが懸念されています。

そのため、物流DXで業務プロセスを改善し、働き手が少なくても仕事量を担保できるようにする必要があるのです。

1-2.物流業界でDXが必要な理由②|再配達・小口配送の増加に伴う非効率化

再配達・小口配送の増加に伴って、物流業界の業務が非効率化してしまっていることも、物流DXが必要な理由です。

新型コロナウイルス感染症の流行などを背景に、ネットショッピングを利用する消費者が急増したことに伴って、再配達・小口配送も急速に増加しました。

再配達や小口配送が増えると、仕訳の手間や配達業務の回数が増加することに加え、計画的な配達が難しくなるので、非効率的になりがちです。

このような状況が、さらに物流業界の人員不足に拍車をかけています。そのため、煩雑になった業務を、物流DXでスリム化することが求められているのです。

1-3.物流業界でDXが必要な理由③|倉庫不足の深刻化

倉庫不足が深刻化していることからも、物流DXが必要とされています。

倉庫不足の原因は主に、小口配送の増加に伴い、取り扱う荷物が増えたためです。荷物が増えれば、管理や配送とのマッチングの手間も増大してしまいます。

労働力不足が顕著な昨今の状況を考え合わせると、単に倉庫を増やせばよいというものでもなく、DXを推進し、荷物管理や配送マッチングの業務負担を軽減していくことが必要です。

2.【課題別】物流DXの具体的なアイデア5選

「物流DXが重要といわれても、具体的に何から始めるべきかわからない」という方も多いでしょう。そこで、ここでは、効果の高い物流DXの具体的なアイデアを、課題別にご紹介します。

【課題別】物流DXの具体的なアイデア5選
課題 DXのアイデア
1. 配送受付に関する業務が煩雑 受付業務の自動化
2. 伝票など書類が多くて管理が面倒 書類のペーパーレス化
3. 倉庫不足に悩まされている 荷物や倉庫管理のデジタル化
4. 人手不足で倉庫作業がうまく回らない 倉庫内作業の自動化
5. 配送関係の人手不足が深刻 ラストワンマイル配送にドローンや自動運転を導入

物流DXにどのように取り組んでいくべきか、具体的なイメージをつかむ参考にしてください。

2-1.受付業務の自動化

配送の受付や運送業者とのやり取りなど、配送の受付に関連する業務が煩雑で負担が大きい場合、受付業務の自動化する物流DXがおすすめです。

具体的には、次のような業務を自動化することで、業務を担当する従業員の作業量を減らし、業務負担を軽減できます。

自動化の例

  • 受付システムを導入し、配送依頼や受付の手続きを自動化
  • 請求書や車両の通行手続きなどを、デジタルツールで自動処理

できるだけ紙でのやり取りをなくし、システム同士を連携させて、手続きをすべてデジタルで完結させられるようにすると効果的です。

課題 DXのアイデア
配送受付に関する業務が煩雑 受付業務の自動化

2-2.書類のペーパーレス化

配送伝票や納品書・請求書など、書類が多くて管理が面倒という場合におすすめなのが、書類のペーパーレス化です。

紙ベースで納品書や伝票を管理しているなら、一括してデジタル化することで、

  • 書類を整理する手間が省ける
  • 書類を探すときも検索するだけですぐに見つかる
  • 書類で収納場所を取らない

といった、多くの利点があります。

すでに紙ベースの書類がたくさんあり、まとめてデジタル化したい場合は、OCR(光学文字認識)機能がついたシステムを導入することで、画像の文字も自動でテキストに変換できるので便利です。

課題 DXのアイデア
伝票など書類が多くて管理が面倒 書類のペーパーレス化

2-3.荷物や倉庫管理のデジタル化

取り扱う荷物が増えて、倉庫不足に悩まされているという場合は、荷物の情報や倉庫管理をデジタル化するDXが効果的です。

荷物の量や配送先・保管場所・倉庫の利用状況などをデジタルツールで一括管理し、リアルタイムで状況を確認できるようにすることで、倉庫を効率よく使えるようになります。

デジタルツールで一括管理する内容の例

  • 荷物の量
  • 配送先
  • 荷物の保管場所
  • 倉庫の利用状況 など

さらに、配送先データをもとに運送トラックとマッチングやデータ共有ができるようにすれば、出荷を効率よく実施できるので、倉庫のスペース不足を解消しやすくなるでしょう。

課題 DXのアイデア
倉庫不足に悩まされている 荷物や倉庫管理のデジタル化

2-4.倉庫内作業の自動化

人手不足で倉庫作業がうまく回らないという場合は、物流DXで、倉庫内作業の自動化を進めましょう。

具体的には、以下のような作業を自動化することが可能です。

自動化できる倉庫内作業の例

  • 倉庫内での荷物の移動はロボットで自動運搬する
  • 倉庫内の在庫状況をデータ化しリアルタイムで管理
  • 発送状況をシステムで自動管理する
  • 荷物にICタグを付け、データ入力をしなくても自動でシステムにデータ反映されるようにする など

上記のような自動化を複数組み合わせることで、作業員をほとんど置かなくても、倉庫内の荷物や在庫状況の管理ができるようになります。

課題 DXのアイデア
人手不足で倉庫作業がうまく回らない 倉庫内作業の自動化

2-5.ラストワンマイル配送にドローンや自動運転を導入

荷物の配送をする従業員の人手が足りていなくて仕事が回らないという場合は、ラストワンマイル配送にドローンや自動運転を導入することが、有効になります。

ラストワンマイル配送とは、荷物のお届け先の最寄りの拠点から、お届け先までの配送のことです。

小口配送や再配達が増えると、このラストワンマイル配送が煩雑になります。そのため、この部分を効率化することは、人手不足対策としても利益をアップさせる上でも重要です。

そこで、AIドローンや自動運転を導入することで、配送担当者の業務を減らせるほか、離島や山間部など交通の便が悪い場所にもスムーズに配送できます。

課題 DXのアイデア
配送関係の人手不足が深刻だ ラストワンマイル配送にドローンや自動運転を導入

3.物流DXを進めるメリット3つ

物流DXを推進することで、企業は、以下の3つのメリットを享受できます。

物流DXを進めるメリット3つ

  • 業務の効率化
  • 労働力不足の解消
  • 働き方改革の実現

それぞれ、どのような恩恵が得られるのか、もう少し詳しく見ていきましょう。

3-1.業務の効率化

物流DXを推進することで、業務の効率化ができるという大きなメリットがあります。

その理由は、デジタルツールを導入し、情報を一括管理しリアルタイムで確認できるようにすることで、

  • 配送先ごとに効率的に輸送手段とマッチングできる
  • 道路状況や渋滞などを把握し、最適な経路で運送できる
  • 過去の再配達の実績データを元に、再配達になりにくい時間帯での配送を行う

などの効率化がはかれるからです。

受付から倉庫管理・配送に至るまで、すべての情報をできる限りまとめて管理することで、効率化できる業務の範囲が増えます。

効率化できれば、業務をこなすのにかかる人員や時間を減らせるので、

  • 利益率が向上する
  • 少ない人材でも生産を高められる
  • コスト削減になる
  • 働き方改革ができる
  • 従業員の満足度が上がり、離職率を減らせる

など、企業にさまざまなメリットがあります。

3-2.労働力不足の解消

労働力不足が解消できる可能性があることも、物流DXの大きなメリットといえます。物流DXを推進すると、以下のとおり、さまざまな作業を自動化できるからです。

物流DXで自動化できることの例

  • 受付業務の自動化
  • 倉庫の在庫管理の自動化
  • 倉庫内の荷物運送の自動化
  • 配送車両と荷物のマッチングの自動化 など

作業をAIやデジタルツールによって自動化した分、手作業が減るので、人手が足りていない場合でも負担を軽減できるようになります。

3-3.働き方改革の実現

物流DXを推し進めれば、働き方改革を実現できます。多様な働き方やワークライフバランスの改善をしたいなら、物流DXはとても有効です。

それは、物流DXによってデジタルツールやIoTなどを取り入れれば、業務効率化や業務負担の軽減がはかれるからです。さらに、各従業員やドライバーの労働状況を可視化することで、人員の適正配置や、労働環境を正常化することにつながります。

4.物流DXを進めるときの注意点2つとその対応策

物流DXを進めるときに、よくある課題は以下の2つです。対応策の例も、あわせて見てみましょう。

物流DXを進めるときの注意点と対応策
注意点 対応策
1. 現場でデジタル化への理解が得られにくい デジタル技術導入の必要性と導入効果について、事前にきちんと説明する機会を設ける
2. 拠点ごとに業務プロセスが異なりデジタル化しづらい 優良な差異は残しつつ、可能な範囲でプロセスを標準化してからデジタル化する

注意点と対応策をきちんと把握しておけば、物流DXはスムーズに進められます。

DXは、注意点はあるものの、取り組みを進めることで業務効率化や働き方改革の実現など多くのメリットがあるので、基本的にどの企業も進めるべきであることを覚えておきましょう。

4-1.現場でデジタル化への理解が得られにくい

物流DXを進めるときによくある課題が、現場でDXへの理解が得られにくく、デジタル化への協力が得られないというものです。

現場で業務に従事する従業員には、これまで、デジタルツールに頼らずとも業務をきちんとこなせていたという認識があるため、このような事態が起こります。経験やノウハウの蓄積がある従業員ほど、デジタルツールへの抵抗感は強くなりがちです。

そのため、きちんとした説明もなく新たな技術を導入しようとしても、反感を買って頓挫してしまうリスクが高くなります。

このような事態を避けるには、デジタル技術導入の必要性と導入効果に納得してもらうことが重要です。DXを推進する前に、説明会などの場を設け、デジタル化によって現場の従業員には具体的にどういうメリットがあるのか、丁寧に伝えましょう。

注意点 対応策
現場でDXへの理解が得られにくい デジタル技術導入の必要性と導入効果について、事前にきちんと説明する機会を設ける

4-2.拠点ごとに業務プロセスが異なりデジタル化しづらい

物流業界でありがちなのが、各拠点が独自に効率化のための工夫をしているため、拠点ごとに業務プロセスが異なり、デジタル化しづらいという課題です。

できるだけ広範囲を一括して同じ形式で管理することで、デジタル化の効果は高まります。そのため、デジタル化を進める前に、データを保存する様式や、基本的な業務フローを標準化しましょう。

ただし、デジタル化に影響のない独自性や、高い業務効率につながる創意工夫は、残すことをおすすめします。無理にすべてを合わせようとすると、作業効率がかえって低下するためです。

注意点 対応策
拠点ごとに業務プロセスが異なりデジタル化しづらい 優良な差異は残しつつ、可能な範囲でプロセスを標準化してからデジタル化する

5.まとめ

物流DXとは、デジタル技術やIoT・データなどを活用し、働き方改革を実現したり、オペレーションを改善したりする取り組みのことです。

現在の物流業界の抱える課題の解決に効果的であるため、国土交通省が推進しています。

物流業界でDXが必要な理由

  • 労働力不足+2024年問題
  • 再配達、小口配送の増加に伴う非効率化
  • 倉庫不足の深刻化

効果の高い物流DXのアイデアは、以下のとおりです。

【課題別】物流DXの具体的なアイデア5選
課題 DXのアイデア
1. 配送受付に関する業務が煩雑 受付業務の自動化
2. 伝票など書類が多くて管理が面倒 書類のペーパーレス化
3. 倉庫不足に悩まされている 荷物や倉庫管理のデジタル化
4. 人手不足で倉庫作業がうまく回らない 倉庫内作業の自動化
5. 配送関係の人手不足が深刻 ラストワンマイル配送にドローンや自動運転を導入

物流DXを推進することで、企業は、以下の3つのメリットを享受できます。

物流DXを進めるメリット3つ

  • 業務の効率化
  • 労働力不足の解消
  • 働き方改革の実現

物流DXを進めるときに、よくある課題は以下の2つです。

物流DXを進めるときの注意点と対応策
注意点 対応策
1. 現場でデジタル化への理解が得られにくい デジタル技術導入の必要性と導入効果について、事前にきちんと説明する機会を設ける
2. 拠点ごとに業務プロセスが異なりデジタル化しづらい 優良な差異は残しつつ、可能な範囲でプロセスを標準化してからデジタル化する

物流業界特有の課題を克服する上で、物流DXは、避けては通れません。今回ご紹介したポイントを踏まえて、効果的なDXをスムーズに進めていきましょう。

ここまで記事を御覧いただいた上で、

「物流DXは難しそう」
「自分で調べて対応する時間がない」
「一旦、詳しい人の話を聞いたうえで判断したい」

とお考えの方は、ぜひ当社にサポートをお任せください。

この記事を書いた人:

PlariTown編集部