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中小企業の経営戦略例5選|戦略別に売上拡大のポイントを解説

「中小企業が検討しやすい、『経営戦略』のフレームワークはあるのだろうか?」
このように、自社に適切な経営戦略を取り入れることにより、売上拡大を実現したい中小企業ご担当者の方は多いと思います。

しかしながら、「どのような経営戦略があるのか」「中小企業が取り組み易い経営戦略はどのようなものか」を、しっかりと理解しながら実際の戦略を検討することは、簡単ではありません。

結論からみれば、中小企業に有効であると考えられる経営戦略の例として、下記の5つが挙げられます。

  • 差別化戦略
  • 水平型多角化戦略
  • ブルーオーシャン戦略
  • ニッチ戦略
  • コストリーダーシップ戦略

上記の中から、貴社に合った経営戦略を取り入れることにより、売上拡大を図れる可能性が高まると考えられます。

一方で、自社の事業内容に合わない経営戦略を選んだ場合、売上が減少するリスクが高まるなど、逆効果を招く恐れがあるため、注意が必要です。

本記事は、

「自社に合った経営戦略を検討し、事業計画のアウトラインを描きたい」
「適切な経営戦略を取り入れて、事業拡大や売上アップを実現したい」

という方にとって参考になるような記事となっています。それでは早速、みていきましょう。

1.中小企業に有効と考えられる5つの経営戦略

冒頭でご説明した通り、売上拡大を図りたい中小企業に合った経営戦略の例として、次の5つが考えられます。

  • 差別化戦略
  • 水平型多角化戦略
  • ブルーオーシャン戦略
  • ニッチ戦略
  • コストリーダーシップ戦略

まずはそれぞれの経営戦略の考え方について、「どのような特徴があるのか」「どのような中小企業におすすめなのか」をチェックしましょう。

1-1.差別化戦略

概要 自社商品やサービスについて、「競合との違い」を明確に打ち出すことにより、ファンを形成し、多少価格が高くとも、自社の商品やサービスが選ばれることを目指す経営戦略
おすすめの企業 自社商品やサービスに、一定レベルの「ブランド力」や「個性」がある中小企業

差別化戦略とは、自社商品やサービスについて、「競合との違い」を明確に打ち出すことにより、ファンを形成し、多少価格が高くても自社商品やサービスが選ばれることを目指す経営戦略です。

一例として「飲食店」を軸に、大手のファストフード店と、街の小料理屋さんを比べてみましょう。

大手のファストフード店は、「安い・早い・うまい」という三拍子を満たせる飲食店として、人気を集めています。

一方、街の小料理屋さんのなかには、多少値が張るものの、料理の美味しさやアットホームな雰囲気、親身な接客などにより人気を博しているお店があります。

「ジャンクフードでも食欲が満たされればそれでいい」という顧客はファストフード店を利用する一方で、ホッと安らげる「サードプレイス」を求めている顧客などは、街の小料理屋さんを利用するでしょう。

つまり、街の小料理屋さんは、食欲を満たせるだけでなく、「くつろげる場所で安らぎたい」というような、食欲以外の顧客ニーズも満たせる店づくりをおこなう「差別化戦略」で、売上を上げているのです。

「大手企業との異なる独自のコンセプトの開発」に成功すれば、市場の中で一定のポジションを獲得できる可能性がある点で、中小企業向けの経営戦略だといえます。

1-2.水平型多角化戦略

概要 自社の「知見・ノウハウ・技術力・設備」などを生かして、新たな商品・サービスを開発し、「既存事業に類似する市場」で勝負する経営戦略
おすすめの企業 1つの分野で、長年培ってきた「知見・ノウハウ・技術力」などがあり、一定の実績を上げている中小企業

「水平型多角化戦略」とは、自社の「知見・ノウハウ・技術力・設備」などを生かして、新たな商品・サービスを開発し、「既存事業に類似する市場」で勝負する経営戦略です。

例えば、本革のメンズ靴を製造していたメーカーが、女性デザイナーを新たに起用して、本革のレディース靴を開発する、といった戦略が挙げられます。

「水平型多角化戦略」は、自社の資産を最大限活かしつつ、一定の知見が蓄積できている「類似市場」への参入する形となるため、「設備投資」や「市場調査に係る費用」を抑えることが可能とみられます。

リスクを抑えながら新規市場を開拓できる点で、中小企業向けといえるでしょう。

1-3.ブルーオーシャン戦略

概要 競合がほぼいない「未開拓市場」へ、独自の商品・サービス・ビジネスモデル・販売手法などを用いて、売上を上げる経営戦略
おすすめの企業 これまでにない新商品・サービスのアイデアを企画する人材や、開発費が豊富にある中小企業

ブルーオーシャン戦略は、競合がほぼいない「未開拓市場」へ、独自の商品・サービス・ビジネスモデル・販売手法などを投入することにより、売上を上げる経営戦略です。

例えば、CRM(顧客管理システム)について、ひと昔前は「パッケージソフト」での売り切り販売が主流でした。しかし、月額料金制での提供方法を展開することにより、新たな市場を開拓した企業があることが知られています。

このように、大手企業が目をつけていない「未開拓市場」を切り開くことにより、売上を上げる方法が、ブルーオーシャン戦略です。

常識をくつがえす「発想の転換」一つで、他社から一歩抜きん出ることができる可能性があるため、中小企業向けの経営戦略です。

とりわけ「未開拓市場」を発見した先見の明が、クラウドファンディング出資者、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタルなどの目に留まれば、資金提供を受けられる可能性がある点でも、中小企業向けの経営戦略だといえます。

1-4.ニッチ戦略

概要 市場のスキマにある「小さな市場」をターゲットにした商品・サービスを開発することにより、大手企業や競合他社と直接的に戦うことなく売上を上げる経営戦略
おすすめの企業 独自性のある商品やサービスで勝負してみたい中小企業

ニッチ戦略とは、スキマにある「小さな市場」をターゲットにした商品・サービスを開発することにより、大手企業や競合他社と直接戦うことなく、売上を上げる経営戦略です。

ポイントは「大手企業が参入しないほど小さな市場で勝負する」という点です。大手企業の中では、数億~数十億円以上の売上が見込めないような小さな市場には、参入しにくいケースがあります。
その点を突くことで、シェア争いを避けることができる可能性があります。

「大手企業とのシェア争いを避けることにより、安定した収益を狙える経営戦略」という点で、中小企業でも取り入れやすい戦略であると考えられます。

1-5.コストリーダーシップ戦略

概要 仕入原価を安く抑え、商品やサービスの価格を下げることにより、市場でのシェア獲得を目指す経営戦略
おすすめの企業 業界内で商品やサービスのコモディティ化が進んでおり、品質向上を目指しても、相応の利益が上げられないと感じている企業

コストリーダーシップ戦略は「仕入原価」を安く抑えることで、市場でのシェア獲得を目指す経営戦略です。

仕入原価には、原材料費や商品製造等に係る人件費が含まれます。
例えば、冷凍食品メーカーの場合には、一部原材料を国産から外国産へ変更し、仕入れ値を下げることにより、販売価格を下げるといった策が考えられます。また、製造をオートメーション化することで、人件費を削減する方法も考えられます。

販売価格が下がれば、価格の「安さ」を重視する顧客による購買が増えることにより、シェアを増やせる可能性があります。

「より安価に原材料を提供してもらえる仕入れ先を発見し、その仕入れ先へ変更する」というプロセスは、中小企業でも実施可能です。

以上の5つが、中小企業に有効と考えられる経営戦略です。

2.【5つの戦略別】中小企業が「売上拡大」のために押さえるべきポイント

経営戦略の検討・実践により享受できるメリットを最大化したい方は、以下のポイントを押さえることがおすすめです。本章では、各ポイントを詳しく解説します。

差別化戦略 「自社ならではの強み・こだわり」で勝負する
水平型多角化戦略 「新規市場への参入に利活用できる『自社の資産』は何か?(=競合優位性のある「知見・ノウハウ・技術力・設備」は何なのか?)」を、十分に理解する
ブルーオーシャン戦略 新たな市場における「顧客ニーズの有無」をしっかりと確認・検証する
ニッチ戦略 「SNS/インターネットを用いた認知拡大」に取り組む
コストリーダーシップ戦略 利益をすり減らす「在庫処分セールの連発」は避ける

また、各経営戦略の策定方法について、具体的なイメージが湧くように、

「メロンパン専門店を展開する中小企業だったら、どんな戦略を打ち立てるのか」

についても解説します。一つずつ、みていきましょう。

2-1.差別化戦略の場合

押さえるべきポイント(例) 「自社ならではの強み・こだわり」で勝負する
「メロンパン専門店」を 展開する中小企業の場合 無添加・無着色・国内産の厳選素材のみで作られた『高級メロンパン専門店』にする

差別化戦略で押さえるべきポイント

差別化戦略では、「大手企業の商品・サービスや、一般的に流通している商品・サービスとの違い」を、明確に打ち出すことが基本です。そのため、「自社ならではの強み・こだわり」で差別化することが肝要です。

例えば、商品が食品の場合、大量生産を前提とする大手企業に対抗して「無添加・無着色・遺伝子組み換え原料未使用・国産原料使用・国内工場で製造」などをアピールすることが考えられます。

「メロンパン専門店」を展開する中小企業の場合

差別化戦略では、「安い・美味しい・有名」という強みをもつ大手のメロンパン専門店と差別化するために「無添加・無着色・国内産の厳選素材で作られた『高級メロンパン専門店』を出店する」といった戦略が考えられるでしょう。

2-2.水平型多角化戦略の場合

押さえるべきポイント(例) 「新規市場への参入に利活用できる『自社の資産』は何か?(=競合優位性のある「知見・ノウハウ・技術力・設備」は何なのか?)」を、十分に理解する
「メロンパン専門店」を 展開する中小企業の場合 メロンパンを焼き上げる独自技術と、これまで得意としてきたブランディング戦略などを用いて、「デニッシュ専門店」を出店する

水平型多角化戦略で押さえるべきポイント

「水平型多角化戦略」では「新規市場への参入に利活用できる『自社の資産』は何か?(=競合優位性のある「知見・ノウハウ・技術力・設備」は何なのか?)」を、十分に理解することが大切です。

この経営戦略では、「なるべく既存の自社の資産を活用しながら、コストを抑えつつ得られる収益の最大化を図る」ことが最大のポイントです。

「メロンパン専門店」を展開する中小企業の場合

水平型多角化戦略では、

  • 表面はサクサク、中身はしっとりとしたメロンパンを焼き上げる「独自技術」
  • 自社が得意とする「ブランディング戦略」

などを組み合わせて「デニッシュ専門店」を作るといったアイデアが考えられます。

このように、自社の保有する「あらゆる資産」を活用することにより、低コスト・低リスクで、類似市場における成功を狙うことが、水平型多角化戦略のポイントです。

2-3.ブルーオーシャン戦略の場合

押さえるべきポイント(例) 新たな市場における「顧客ニーズの有無」をしっかりと確認・検証する
「メロンパン専門店」を 展開する中小企業の場合 海外に「メロンパン専門店」を出店する

ブルーオーシャン戦略で押さえるべきポイント

ブルーオーシャン戦略では、新たな市場における「顧客ニーズの有無」を、しっかりと確認・検証するようにしてください。

未開拓市場では、そもそも顧客ニーズがない可能性も高くその商品・サービスを必要とする人がいるかをなるべく正確に見極めなければ、失敗に終わってしまうからです。

定性調査(1:1の顧客インタビューにより顧客ニーズの深堀りをおこなうなど)や定量調査(アンケートなどによる実数をもとにした調査)を実施して、顧客ニーズの有無を精査しましょう。

「メロンパン専門店」を展開する中小企業の場合

ブルーオーシャン戦略では、メロンパンを知らない海外で「メロンパン専門店」を出店するといったアイデアが考えられます。

このように、ブルーオーシャン戦略は、競合が目をつけていない新規市場で勝負するのがポイントです。

2-4.ニッチ戦略の場合

押さえるべきポイント(例) 「SNS/インターネットを用いた認知拡大」に取り組む
「メロンパン専門店」を 展開する中小企業の場合 「米粉で作ったグルテンフリーメロンパン」を作り、SNSを用いた認知拡大へ取り組む

ニッチ戦略で押さえるべきポイント

ニッチ戦略では「SNS/インターネットを用いた認知拡大」に取り組むことが一つの手です。

仮に、小さな市場を狙った商品やサービスを開発した中小企業が、それを有人店舗で販売していたとします。店舗売上拡大のための施策として、近隣住居へチラシのポスティングや駅前広告への出稿によって狙える商圏は、せいぜい半径数十キロメートル程度です。ニッチなニーズを持つ人は限られているために、一定の売上を確保することのハードルは自然と高くなってしまいます。

このような場合、見込み顧客の母数を効率よく増やせる点で、SNSやインターネットが有効になるのです。

「メロンパン専門店」を展開する中小企業の場合

ニッチ戦略では、「米粉で作ったグルテンフリーメロンパン」を作り、SNSを用いて認知拡大に取り組むアイデアが考えられます。

米粉は、小麦粉のようにふんわりと膨らみにくいことなどから、メロンパンの原料には適していないかもしれません。しかし、小麦粉アレルギーになってしまった人などの中で、「メロンパンが食べたい」という方がいれば、安定したファンを得られる可能性があります。

このように、SNSを用いて「見込み顧客」の母数を増やすことができれば、ニッチな商品でも、相応の売上が期待できるようになるでしょう。

2-5.コストリーダーシップ戦略の場合

押さえるべきポイント(例) 利益をすり減らす「在庫処分セールの連発」は避ける
「メロンパン専門店」を 展開する中小企業の場合 夜間のみ、定価以下のメロンパンを『無人販売店』で売る

コストリーダーシップ戦略で押さえるべきポイント

コストリーダーシップ戦略では「在庫処分セールの連発」は避けるようにすることがポイントです。

なぜならば、在庫処分セールは、売れない商品を「安売り」しているに過ぎず、得られる相対的な利益が増加していかないからです。

コストリーダーシップ戦略の本質は、あくまでも「仕入れ値」を下げるという点にあります。
この戦略により、中長期にわたって相応の利益を上げつつ、市場でのシェア拡大を目指すことが最大のポイントです。

「メロンパン専門店」を展開する中小企業の場合

コストリーダーシップ戦略では「夜間のみ、定価以下のメロンパンを『無人販売店』で売る」といったアイデアが考えられます。

日中は、路面店でメロンパンを低下で販売し、18時以降は、販売スタッフの人件費削減の観点から無人販売店での販売に切り替えることによって、一定の初期コストはかかるものの、定価以下での販売でも十分に利益を創出できるようにします。

客足が遠のく時間帯も、24時間体制でメロンパンを売ることによって、新たな販売機会の獲得や、中長期的な売上拡大を目指せる可能性があります。

3.まとめ

いかがでしたか。
中小企業の経営戦略や、戦略検討にあたっておさえるべきポイントなどについて、理解が深まりましたでしょうか。

最後に、本記事の内容を整理します。

中小企業に有効な経営戦略5つ

  • 差別化戦略
  • 水平型多角化戦略
  • ブルーオーシャン戦略
  • ニッチ戦略
  • コストリーダーシップ戦略

【5つの戦略別】中小企業が「売上拡大」のために押さえるべきポイント

  • 「自社ならではの強み・こだわり」で勝負する
  • 「新規市場への参入に利活用できる『自社の資産』は何かを十分に理解する
  • 新たな市場における「顧客ニーズの有無」をしっかりと確認・検証する
  • 「SNS/インターネットを用いた認知拡大」に取り組む
  • 利益をすり減らす「在庫処分セールの連発」は避ける

本記事を参考に、貴社に応じた経営戦略を検討していただけましたら幸いです。

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この記事を書いた人:

PlariTown編集部