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電子帳簿保存法対応システムとは?必須知識から最適なツール選びまで

電子帳簿保存法対応システムとは、電子帳簿保存法に対応する形で電子帳簿を保管できる「JIIMA認証」を得たシステムのことです。

電子帳簿保存法対応システムとは
 電子帳簿保存法の要件を漏れなく満たしていることが照明されたシステム

電子帳簿保存法対応システムを選ぶことで、手間を省いて法改正への対応漏れをなくせるほか、経理業務を効率化できるなど、多くのメリットがあります。

多くのメリットがある電子帳簿保存法対応システムは積極的に導入していきたいツールです。一方で
「種類が多くて、どれを選べばよいのかわからない」
「選び方のポイントが知りたい」
という方も多いでしょう。

実際に、電子帳簿保存法対応システムはどれを選んでも同じではなく、使いたい書類に対応したものや、効率化したい業務に関係する機能が充実したものを選ばないと使いこなせません。

さまざまな種類がある中から、自社に最適な電子帳簿保存法対応システムを選ぶには、電子帳簿保存法の対象などに関する基礎知識や選び方のポイントなどを押さえておくことが必要です。

電子帳簿保存対応システムの選び方のポイント

  • 対応書類の多いものを選ぶ
  • システム化したい業務の範囲に合わせる
  • 自動入力機能があるものを選ぶ

この記事では、電子帳簿保存法対応システムに関する特徴・メリットや、電子帳簿保存法対応システムの対象となる文書・保存方法、電子帳簿保存法対応システムの選び方などを解説します。

この記事の内容

  • 電子帳簿保存法対応システムとは
  • 電子帳簿保存法対応システムの対象となる文書・保存方法
  • 電子帳簿保存法対応システムの選び方

今回ご紹介する内容を把握しておくことで、電子帳簿保存法対応システムについて、基本的なことを理解し、自社に最適なシステムを選ぶことができるようになるでしょう。

改正の機会が多い法令に漏れなく対応し、安心して業務を進めるためにも、自社のニーズに沿った電子帳簿保存法対応システムを選べるようにしましょう。

どのような電子帳簿保存法対応システムが自社にあっているかが分からない方は、ぜひ当社にサポートをお任せください。

1.電子帳簿保存法対応システムとは

電子帳簿保存法対応システムとは、電子帳簿保存法に対応する形で、電子帳簿を保管できる「JIIMA認証」を得たシステムを指します。

JIIMA認証とは
 公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証。
 電子帳簿保存法の要件を満たしていることが認められている。

上記のとおり、電子帳簿保存法対応システムは、電子帳簿保存法の要件を漏れなく満たしていることが証明された安心できるシステムです。

電子帳簿保存法の複雑な要件の全容を把握できていなくても、対応システムを選びさえすれば、手間をかけずに保存の要件にあった業務体制を構築できます。

ここでは、電子帳簿保存法対応システムについて、

  • 必要とされる背景
  • 電子帳簿保存法改正のポイント
  • システムの特徴
  • 導入するメリット

といった、正しいシステム選びに欠かせない基本的な事項を押さえておきましょう。

1-1.電子帳簿保存法対応システムが必要とされる背景

電子帳簿保存法対応システムが必要とされる背景には、法律の改正や新しい制度の施行により、企業を取り巻く環境が大きく変わっており、対応が求められていることが挙げられます。

主な変化を確認しておきましょう。

電子帳簿保存法対応システムが必要とされる背景
2022年1月
改正電子帳簿保存法施行
  • 電子帳簿等保存やスキャナ保存に関する税務署長の事前承認制度が廃止
  • 電子帳簿等保存やスキャナ保存に関する要件の緩和
  • 不正があった場合の罰則(重加算税の加重措置)追加など
2023年10月
インボイス制度開始
  • 消費税の仕入税額控除に関する取扱いが変更
  • 請求書の保管などの手続きが煩雑になる

参照元:国税庁:No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)
国税庁:電子帳簿保存法の内容が改正されました

以上のような法改正などに伴い、国税関係の帳簿や書類の取扱いに、複数の変更点が発生します。

そして、複雑な変更点に漏れなく確実に対応するため、電子帳簿保存法対応システムへの注目が集まっているのが現状です。

1-2.電子帳簿保存法改正による主な変更点

電子帳簿保存法改正に伴う、企業の対応に直接関係する主な変更点は、次の5つです。

電子帳簿保存法改正による主な変更点
電子取引データ保存時の要件義務化
  • データで保存する場合は、真実性と可視性の確保などが必要
  • 真実性とは、改ざんなどの心配がなく正しい書類であることで、タイムスタンプの付与などが必要
  • 可視性とは、閲覧や検索が簡単にでき、必要なときにいつでもすぐに使えることで検索機能などが必要
事前承認手続き廃止 電子帳簿保存するときに事前に必要とされていた税務署長の承認が不要に
適正事務処理要件の廃止 電子帳簿などをスキャナ保存するときに必要とされていた社内規程の整備などが不要に
タイムスタンプ要件緩和

タイムスタンプの要件が、以下のとおり緩和

【改正前】
受け取った人が書類に自筆でサインし、3営業日以内にタイムスタンプを付与
【改正後】
自筆のサインは不要になり、最長約2ヵ月と概ね7営業日以内にタイムスタンプ付与

検索要件の緩和 税務署職員の質問検査権行使に対し、すぐにデータがダウンロードできる状態になっているなら、以下の①②の検索要件は不要に

①日付または、金額の範囲を指定して検索できるようになっている
②2つ以上の項目を組み合わせた条件を指定して検索できるようになっている

参照元:国税庁:電子帳簿保存法一問一答
国税庁:電子帳簿保存法の内容が改正されました

上記のとおり、法改正によって電子取引データ保存時は要件が厳しくなっていますが、承認手続きやタイムスタンプなど広い範囲で、要件が緩和されています。

なお、電子取引データ保存については、いくつかの要件を満たすことを条件に紙保存でも認めるとする猶予期間が、2023年以後も継続される予定(2022年12月時点)です。猶予期間中は紙で保存することで、要件義務化による影響を回避できますが、猶予期間がいつ終わるのか現時点では未定ですので、電子帳簿保存法の要件に沿った業務体制の構築は余裕をもって実施することが推奨されています。

1-3.電子帳簿保存法対応システムでできること

電子帳簿保存法対応システムとは、次のような機能を備えたシステムのことです。

電子帳簿保存法対応システムの機能例
真実性を担保する機能 データに対するタイムスタンプの付与などに対応
検索機能 取引先・日付や金額など、さまざまな基準で検索可能
スキャン機能 スキャナ保存制度の要件を満たして、紙の資料をスキャンできる
OCR機能 画像の文字情報を認識してデータ化できる

以上のとおり、電子帳簿保存法に対応した保存方法を実現する機能が充実しているのが特徴です。

なお、電子帳簿保存法の対象となる文書や、その保存方法について「2. 電子帳簿保存法対応システムの対象となる文書・保存方法」で改めて解説します。

ここでは、電子帳簿保存法に対応する機能が網羅されているシステムであるという点を理解しておきましょう。

1-4.電子帳簿保存法対応システムを導入するメリット

電子帳簿保存法対応システムを導入すると、企業には次のようなメリットがあります。

電子帳簿保存法対応システムを導入する主なメリット

  • 法改正への対応漏れをなくせる
  • 経理業務を効率化できる
  • 不正防止になる

「法改正への対応だけなら、わざわざシステムを導入しなくても」と思いがちですが、実際には多くのメリットを備えているのが、電子帳簿保存法対応システムです。

1-4-1. 法改正への対応漏れをなくせる

電子帳簿保存法対応システムを導入する大きなメリットは、法改正への対応漏れをなくせることです。

法律の改正や制度の変更は、不定期にたびたび実施されるので、つい対応が後手に回りがちになります。

また、法律や制度の内容は複雑で細かいので、対応したつもりでもうっかり対応できていない箇所が出てしまいがちです。

しかし、オンラインの電子帳簿保存法対応システムを導入していれば、法改正の内容を把握できていなかったとしても、常に最新の改正・制度に対応した業務環境を整備できます。

1-4-2. 不正防止になる

電子帳簿保存法対応システムで帳簿や書類を保管することで、改ざんなどの不正を防止できます。

電子帳簿保存法対応システムでは、保存したデータについてタイムスタンプを付与したり、修正履歴を保存したりする機能があります。履歴が残ることで、帳簿を不正に書き換えることが難しくなるので、内部統制の強化に役立ちます。

1-4-3. 経理業務を効率化できる

電子帳簿保存法対応システムは、経理業務の効率化にも効果を発揮します。

検索機能の充実したシステムで帳簿や書類を管理すれば、欲しいデータをすぐに見つけることができます。また、紙の帳簿のように保管場所を必要としないため、余計なスペースを確保しなくて済みます。

2.電子帳簿保存法対応システムの対象となる文書・保存方法

最適なシステムを選ぶためには、押さえるべき電子帳簿保存法の基本的なポイントがあります。

具体的には、電子帳簿保存法対応システムの対象となる文書・保存方法を把握しておくことで、自社の業務に最適なシステムはどのようなものかを見極めやすくなるでしょう。

電子帳簿保存法対応システムの対象となる文書・保存方法
対象となる文書は3種類 国税関係帳簿・国税関係書類・電子取引の3種類が対象となる
書類ごとの保存方法3つ 電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データの保存の3つ
真実性と可視性を確保 真実性とは、改ざんの心配がないこと
可視性とは、閲覧や検索が簡単にできること

参照元:国税庁:電子帳簿保存法一問一答
国税庁:電子帳簿保存法の内容が改正されました

それぞれの内容について、もう少し詳しく説明します。

2-1.対象となる文書は3種類

電子帳簿保存法対応システムの対象となる文書は、国税関係帳簿・国税関係書類・電子取引の3種類です。

電子帳簿保存法の対象となる文書
国税関係帳簿
  • 所得税や法人税といった国税に関わる帳簿類
  • 仕訳帳、総勘定元帳、売掛帳、買掛帳、現金出納帳、固定資産台帳など
国税関係書類
  • 決算関係書類と取引関係書類すべて
  • 貸借対照表、損益計算書、試算表、棚卸表、請求書、見積書、納品書、領収書、注文書など
電子取引
  • 電子データでやり取りを行った取引に関係する書類
  • 見積書、注文書、納品書、請求書、領収書など

参照元:国税庁:電子帳簿保存法一問一答
国税庁:電子帳簿保存法の内容が改正されました

上記のとおり、電子帳簿保存法対応システムの対象となる文書は多岐にわたります。業務で取り扱う文書の範囲を把握し、その文書がシステムの対応範囲かどうかを確認して、導入するシステムを選ぶようにしましょう。

2-2.書類ごとの保存方法3つ

電子帳簿保存法対応システムの対象となる文書の保存方法は、電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データの保存の3つです。

書類ごとの保存方法
電子帳簿等保存
  • 国税関係帳簿や国税関係書類が該当
  • 電子データとして作成した帳簿や書類などを、そのまま電子データとして保存する
スキャナ保存
  • 請求書や見積書など、紙でやり取りした取引関係の書類が該当
  • 紙の資料をスキャナなどで読み取り、データで保管する
  • データ化した後の紙資料は、破棄しても問題ない
電子取引データの保存
  • 電子データでやり取りした取引関係の文書が該当
  • メールで添付した請求書のデータなどを、そのままデータとして保管

電子帳簿保存法では、文書の種類によってさまざまな保管方法が認められていることを、覚えておきましょう。

2-3.真実性と可視性を確保しよう

電子帳簿保存法に沿って電子データを保存するときに満たすべきポイントが、真実性と可視性です。それぞれどういう意味なのか、確認しておきましょう。

電子データを保存するときに満たすべきポイント
真実性
  • 改ざんなどの心配がなく、正しい書類であること
  • 電子帳簿保存法対応システムのデータの変更履歴を残す機能や、タイムスタンプなどの機能で、要件を満たせる
可視性
  • 閲覧や検索が簡単にでき、必要なときにいつでもすぐに使えること
  • 取引先、日付や金額など、さまざまな基準で検索できる機能がある電子帳簿保存法対応システムを導入することで、要件を満たせる

導入するシステムを選ぶときは、自社の業務の形態に応じて、上記の真実性や可視性の要件を満たしやすい機能が充実しているかどうかを、チェックするとよいでしょう。

電子帳簿保存法対応システムの選び方については、重要なポイントなので、次章「3. 電子帳簿保存法対応システムの選び方」でさらに詳しく紹介します。

3.電子帳簿保存法対応システムの選び方

業務フローに適して、使いこなしやすい電子帳簿保存法対応システムを選ぶには、以下のようなポイントを押さえましょう。

電子帳簿保存法対応システムの選び方

  1. 対応書類の多いものを選ぶ
  2. システム化したい業務の範囲に合わせる
  3. 自動入力機能があるものを選ぶ

それぞれ、どのような点が重要なのか、以下で解説します。「電子帳簿保存法対応システムの導入を検討している」「最適なシステムを選びたい」という方は、ぜひ目を通しておいてください。

3-1.対応書類の多いものを選ぶ

電子帳簿保存法対応システム選びで迷ったら、対応書類が多いものを選ぶのがおすすめです。

電子帳簿保存法対応システムと一言で言っても、「満遍なく対応」「請求書を中心に対応」など、対応している書類の範囲は異なります。

多くの書類に対応しているシステムを選ぶことで、

  • 1つの電子帳簿保存法対応システムで処理を完結させられるので、業務を効率化できる
  • 将来的に取り扱う書類が増えた場合も、スムーズに使い続けられる

といった利点があります。

企業におけるペーパーレス化の重要性は、今後も高まっていくものと考えられます。現在は紙で扱っている書類も電子化する可能性があることを念頭に、対応書類の多いシステムを選びましょう。

3-2.システム化したい業務の範囲に合わせる

使い勝手のよい電子帳簿保存法対応システムを選ぶには、システム化したい業務の範囲に合わせることも大切なポイントと言えます。システムによって、充実している機能や対応している処理などが異なるからです。

例えば、紙でやり取りをした請求書などを電子データで保存する機会が多い場合は、スキャナ機能が充実しているものが使いやすくなります。

また、電子データを保存するだけでなく帳簿作成なども行いたい場合は、作成機能を備えたシステムや、帳簿作成システムと連携がスムーズなシステムを選ぶことがおすすめです。

以上のとおり、システムを選び始める前に、システム化する業務の範囲を明確にしておくことで、より使いやすいシステムを選べるようになります。

3-3.自動入力機能があるものを選ぶ

業務効率化に役立つ電子帳簿保存法対応システムを導入したいなら、自動入力機能があるものを選びましょう。具体的には、精度の高いOCR機能を備えるシステムがおすすめです。

OCR機能とは、画像の文字情報を認識してデータ化できる機能のことです。OCR機能があることで、特に紙の請求書や明細書などを電子データにして整理する際の手間を大幅に減らすことができます。

業務の手間を最小化したいなら、電子帳簿保存法対応システムを検討する際に、OCR機能の有無をチェックしてみましょう。

4.まとめ

電子帳簿保存法対応システムとは、電子帳簿保存法に対応する形で電子帳簿を保管できるシステムのことで「JIIMA認証」を得たシステムのことを意味します。

JIIMA認証とは

  • 公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証
  • 電子帳簿保存法の要件を満たしていることが認められている

法律の改正や新しい制度の施行により、企業を取り巻く環境が大きく変わっており、対応が求められていることから、電子帳簿保存法対応システムが必要とされています。

電子帳簿保存法対応システムの対象となる文書・保存方法は、以下のとおりです。

電子帳簿保存法対応システムの対象となる文書・保存方法
対象となる文書は3種類 国税関係帳簿・国税関係書類・電子取引の3種類が対象となる
書類ごとの保存方法3つ 電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データの保存の3つ
真実性と可視性を確保 真実性とは、改ざんの心配がないこと
可視性とは、閲覧や検索が簡単にできること

業務フローに適し、使いこなしやすい電子帳簿保存法対応システムを選ぶには、以下のポイントを押さえましょう。

電子帳簿保存法対応システムの選び方

  1. 対応書類の多いものを選ぶ
  2. システム化したい業務の範囲に合わせる
  3. 自動入力機能があるものを選ぶ

改正の機会が多い法令に漏れなく対応し、安心して業務を進めるためには、法律に対応したシステムを導入することが一番確実です。

今回ご紹介した内容を参考に、自社のニーズに沿った電子帳簿保存法対応システムを選べるようになりましょう。

どのような電子帳簿保存法対応システムが自社にあっているかが分からない方は、ぜひ当社にサポートをお任せください。

(※)2023年6月29日時点の情報のため、最新の情報ではない可能性があります。
(※)本記事は税理士の意見等を基に作成しておりますが、内容の信ぴょう性について保証するものでございません。法務・税務・労務に関するご相談は、弁護士や税理士など専門家の方にご相談いただきますようお願い申し上げます。

この記事を書いた人:

PlariTown編集部