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小売業こそDXに取り組むべき!得られる成果や事例、実践法5つを解説

ビジネス環境が大きく変わっている小売業において、競争力を維持するためには、DXの推進は欠かせません。小売業にこそDXが必要と言えるのには、以下のような背景があるからです。

小売業にこそ、DXが必要と言える背景

最新ではない、長年利用した既存のシステム(レガシーシステム)だけでは、以下のような環境の変化に対応しきれないから

  • グローバル化やSNSなどによる市場ニーズの多様化
  • オンラインショッピング普及に伴う購入形態の変化
  • 人手不足による無人店舗などを導入検討する必要性

小売業においてDXを推進すれば、

  • 業務の省力化
  • スタッフの省人化
  • 迅速な意思決定

などを実現することができるので、上記のような課題のスムーズな解決につながります。

ただし、小売業のDXで効率的に成果を出すには、小売業ならではのアプローチ方法や、ポイントなどを押さえておく必要がある点に注意しましょう。例えば、オンラインとオフラインの販売形態を最適なバランスで融合させるOMOは、小売業のDXで必須の視点です。

小売業DXの具体的なアプローチ方法5つ

  1. オンライン接客
  2. ECサイトの自動化
  3. AIによる需要予測
  4. アプリの活用
  5. 体験型の実店舗導入

このように、一言でDXと言っても、業種に応じてDXを成功させるために重視すべきポイントや特徴が違うことを、理解しておきましょう。

この記事では、小売業におけるDXの概要や、具体的なアプローチ方法、事例などをご紹介します。

この記事の内容

  • 小売業におけるDXとは
  • 小売業DXの具体的なアプローチ方法5つ
  • 小売業のDX事例
  • 小売業のDXを成功させるポイント

後半では、小売業のDXを成功させるポイントについても解説していますので、DXをスムーズに成功に導きたいという場合などに、お役立ていただけるでしょう。

今回ご紹介する内容を確認しておくことで、小売業におけるDXについて基本的なことを理解し、自社ではどのようにDXに取り組んでいくべきか、検討できるようになります。デジタル技術を利活用し活路を見出すためにも、まずは小売業のDXについて基礎知識を身に付けておきましょう。

1.小売業におけるDXの重要性は増している

経済産業省が推進し、多くの企業が取り組みを始めているDX(Digital Transformation)は、小売業界でも推進する企業が増加しています。

東京商工会議所の調査「中堅・中小流通・サービス業の経営課題に関するアンケート」によれば、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、デジタル化・IT活用が増加したと回答した小売企業は、半数近く(48.7%)にもあがりました。

  • コロナ禍でデジタル化・IT活用は変化したか

このような注目度の高いDXについて、小売企業にとっての必要性や、小売業ならではの特徴、得られる効果などを解説します。スムーズにDXを推進するためにも、小売業にとってDXに取り組むことの意義を把握しておきましょう。

1-1.小売業でDXを推進する必要性は高い

小売業は、DXを推進する必要性が比較的高い業界と言えます。その理由は、以下のとおり小売業界を取り巻く環境が大きく変わっており、既存のレガシーシステムだけでは、このような環境の変化に対応しきれないのが実情だからです。

小売業でDXを推進する必要性が高い理由

既存のレガシーシステムだけでは、以下のような環境の変化に対応しきれないから

  • グローバル化やSNSなどによる市場ニーズの多様化
  • オンラインショッピング普及に伴う購入形態の変化
  • 人手不足による無人店舗などを導入検討する必要性

上記のとおり、グローバル化の進展やSNSの浸透などに伴い、以前と比べて市場ニーズは多様化し、変化も早くなっています。その結果、従来のように一般的に売れ筋と言われる商品を準備するだけでは利益を上げにくく、マーケットのリサーチ結果などのデータ分析に基づく販売戦略が必要になっているのが現状です。

また、オンラインショッピングが広く普及したことに伴い、購入形態が変化していることへの対応も検討する必要があります。例を挙げると、商品の実物をリアルのお店で確認し、購入する際はオンラインショップで購入するという顧客への対応を、検討する必要があるでしょう。

さらに、小売業では深刻な人手不足によって、無人店舗などを導入検討する必要性が出てきています。このような場合にも、DXを進めておくことでスムーズに導入が可能です。

1-2.小売業のDXで欠かせないのがOMO

小売業でDXを推進する際には、OMO(Online Merges with Offline)を実現することを心がけることが欠かせません。

OMOとは、オンラインとオフラインを融合させた販売形態のことです。顧客が、ニーズ次第で、オンラインとオフラインをシームレスに利用できるようにマーケティングすることを意味します。

具体的には、以下のようなマーケティングが、OMOと言えるでしょう。

OMOの具体例

既存のレガシーシステムだけでは、以下のような環境の変化に対応しきれないから

  • ECサイトで注文して、受け取りは実店舗も選べる
  • 実店舗で実際の商品を確認し、購入は商品のバーコードなどを読み込んでオンラインショップで行う
  • 来店前にモバイル端末でメニューを注文し、待たずに食事ができる など

オンラインショッピングの浸透やモバイル端末の技術の進歩などで、インターネットがますます身近な存在となったことで、顧客の利便性・満足感を高めるためには、OMOが重要になったと言えるでしょう。

そのため、小売業でDXを推進する際は、このOMOの実現も視野に入れながら進めていくことが、重要なのです。

1-3.小売業のDXで得られる効果

小売業でDXを推進することで、運営の省力化がはかれるなど、さまざまな効果が得られます。

小売業のDXで得られる代表的な効果

  • 省力化、スタッフの人数を減らすことができる
  • 迅速な意思決定ができる
  • キャッシュレス化を進めやすくなる など

DXを進めることで、セルフレジを導入したり在庫補充を半自動化することで、省力化できます。その結果、スタッフの人数を減らせるので、人手不足でも円滑に運営することが可能です。

また、ITツールを導入することで、データに基づく迅速な意思決定ができます。市場ニーズの移り変わりが早い現代において、変化に即対応できる体制づくりができるDXは、必須です。

さらに、インバウンド集客に必須のキャッシュレス化も、デジタル化が進んでいることで導入しやすくなります。

このように、DXを推進することは、近年よくある小売業の課題を解決し企業が競争力を高める上で、非常に有効です。

2.小売業DXの具体的な実践方法5つ

小売業のDXでは、具体的にどのようなアプローチ方法があるのか、気になる方も多いでしょう。
ここでは、代表的なアプローチ方法を5つご紹介します。

小売業DXの具体的なアプローチ方法5つ

  • オンライン接客
  • ECサイトの自動化
  • AIによる需要予測
  • アプリの活用
  • 体験型の実店舗導入

それぞれのアプローチ方法について、もう少し詳しく見ていきましょう。

2-1.【小売業のDXアプローチ方法①】オンライン接客

小売業の代表的なDXアプローチ方法の1つが、オンライン接客です。
オンライン接客とは、Web会議システムやチャットツールなどを使って、インターネット経由で行う接客のことです。

オンライン接客を導入することで、顧客に来店してもらう必要がなくなります。そのため、場所を問わず、商品の説明や販売を行うことが可能です。また、実店舗にオンライン接客用の端末を置いておいて、来店した顧客の対応をオンラインで行うことで、常駐させるスタッフの人数を減らすことができます。

求人支援サイト「engage」が実施したアンケート調査では、43%もの企業がオンライン接客を導入しています。

オンライン接客を導入するには、Web会議システムなどのオンラインで接客できるツールとインターネット環境、端末などを準備することが必要です。

オンライン接客ツールの基本情報
導入コスト
  • 月額数千円から導入可能
導入効果
  • 購入率や成約率の向上
  • 新規顧客の獲得
  • スタッフの人数を減らすことによるコスト削減
向いているケース
  • 営業やマーケティングを行う機会の多い保険・金融業など
  • 事前説明会を実施する機会の多い不動産業など
  • カスタマーサポート

2-2.【小売業のDXアプローチ方法②】ECサイトの自動化

ECサイト運営の自動化も、小売業において効果を実感しやすいDXアプローチ方法と言えます。ECサイト運営の自動化とは、RPA(Robotic Process Automation)を導入し、ECサイトの受注管理・発送業務などを自動化することです。

ECサイトの運営業務を自動化することで、受注対応や在庫管理といった業務をスリム化し、マーケティングや営業活動などに注力できるようになるというメリットがあります。

ECサイトの自動化をするには、RPAツールを導入しましょう。インターネット上で検索することで、どのようなRPAツールがあるのかを確認できます。

ECサイトの自動化の基本情報
導入コスト
  • 自動化の内容にもよるが、月額数千円程度から自動化可能
導入効果
  • ECサイト運営の負担を軽くできる
  • 人手不足でもサイト運営が可能になる
向いているケース
  • ECサイトを運営している、もしくは運営したい場合

2-3.【小売業のDXアプローチ方法③】AIによる需要予測

代表的な小売業のDXアプローチ方法として、AIによる需要予測が挙げられます。AIによる需要予測とは、これまでの販売実績のデータなどをAIで分析し、最適な在庫管理を実現する仕組みのことです。

AIによる需要予測を導入することで、効率的な仕入れ・販売ができるようになります。過剰な在庫を抱えて、食品ロスを発生させたり処分費用が増大したりするリスクを、抑えることが可能です。

AIツールには、クラウドやオンプレミス用のツールなど、さまざまな種類があります。導入検討するには、インターネット上で検索し、どういう種類があるのか確認するところから始めるとよいでしょう。

AIによる需要予測の基本情報
導入コスト
  • 開発手法にもよるが、数十万円程度から導入可能
導入効果
  • 在庫を最適化できる
  • 在庫管理にかかる業務負担を軽減できる
向いているケース
  • 在庫管理が煩雑な店舗運営を省力化したいケース
  • 食材の仕入れを最適化することで食品ロスを減らせる飲食業 など

2-4.【小売業のDXアプローチ方法④】アプリの活用

マーケティングや業務管理にアプリを活用することで、小売業のDXを効果的に進めることができます。

顧客向けアプリであれば、クーポンを配信したりプッシュ通知などで情報発信したりすることで、購買意欲を高めることが可能です。オンラインショップへ誘導してもよいでしょう。アプリから顧客の購入履歴データを収集することで、商品開発に役立てることもできます。

また、在庫管理や社内の情報共有用アプリを導入すれば、業務を効率化したり、ケアレスミスを防いだりすることが可能です。

アプリを導入するには、アプリの作成が必要になります。開発方法は、大きく分けると、自分たちで行うか委託するかの二択です。

アプリの活用の基本情報
導入コスト
  • アプリの機能にもよるが、数十万円程度から開発可能
導入効果
  • 効果的に集客できる
  • クーポンの配信などで販売促進につながる
向いているケース
  • 集客の手間を省きたいケース
  • 小まめにクーポンや情報を配信したいケース

2-5.【小売業のDXアプローチ方法⑤】体験型の実店舗導入

DXの取り組みとして体験型の実店舗を導入することで、新たな顧客の獲得や販売促進につなげることができます。

体験型店舗とは、実際に使ってみるなど、商品を体験することを重視した店舗のことです。あわせて販売を行うケースや、全く販売を行わないケースもあります。例えば、販売しているコスメを使ってメイクできる店舗や、家電製品を実際に使ってみられる店舗などが挙げられます。

体験型店舗を導入することで、自分の体験を重視して購買行動をとると分析されているZ世代の顧客を、獲得しやすくなるメリットがあります。また、商品に納得して購入してもらえるので、顧客満足度を高めることが可能です。

体験型の実店舗の基本情報
導入コスト
  • 導入する店舗の規模や内装による
  • 概ね、賃料月額の数ヶ月分から十数ヶ月分程度を見込んでおく
導入効果
  • 新規顧客の獲得
  • 顧客満足度を高める
向いているケース
  • 幅広い層の新規顧客を獲得したい
  • ブランドや商品の認知度を高めたい

3.小売業のDX事例

小売業のDXについて基本的なことがわかったところで、実際の成功事例を確認してみましょう。

小売業のDX事例
大手小売りチェーンの事例
  • AIやデータを活用した店舗オペレーション・セルフレジ・顧客向けアプリの導入など、多数のDX施策を実施
大手コンビニエンスストアの事例
  • AI需要予測などで省力化
  • 導入検討、ラボでの検証、実店舗実験という流れを繰り返すことで、新たな取り組みに挑戦

各事例について、内容を説明しますので、実践イメージをつかむ参考にしてみてください。

3-1.大手小売りチェーンの事例|AI需要予測・アプリ活用など

大手小売りチェーンでは、店舗・本社のオペレーションからセルフレジ・アプリ導入・キャッシュレス決済導入などの顧客サービスまで、幅広くDXに取り組んでいます。

DX推進の一例を見てみましょう。

AIを利用した空調制御
  • 店舗の内外の温度や人の流れ・湿度などのデータを、リアルタイムで計測しAIで解析
  • 解析結果をもとに空調を最適化し、二酸化炭素の排出を削減
セルフレジ
「レジゴー」
  • スマホタイプの持ち歩けるセルフレジ
  • 入店時にレジ専用スマホを借り、持ち歩くので、商品をカゴに入れた時点で商品の金額や合計額を確認できる
  • お店を出るときに合計金額を精算する

このように、サスティナビリティ、顧客満足度向上など、さまざまなことをDXで実現しています。

3-2.大手コンビニエンスストアの事例|AI需要予測など

大手コンビニエンスストアチェーンでは、DXによって店舗業務の効率化による人手不足を解消していることに加え、実験と実証を繰り返すことで、新たな取り組みにも次々と挑戦しているのが特徴です。

既存の取り組みと新たな取り組みについて、一例を見てみましょう。

既存のDX施策例
  • AI需要予測で、発注精度の向上や食品ロス削減を実現
  • 発注の半自動化で店舗運営を省力化
実証実験に取り組んでいることの一例
  • ウォークスルーで使える決裁システム
  • 生体認証によるレジ無しでの商品購入システム

ラボでの検証や実店舗での実験を行うなど、施策の効果を見極めながらDXを推進していくあり方は、すべての企業で参考にできると言えるでしょう。

4.小売業のDXを成功させるポイント2つ

小売業でDX推進を成功させるためには、押さえるべきポイントが2つあります。

小売業のDXを成功させるポイント2つ

  1. データを一元的に管理できる体制を整える
  2. 組織全体で横断的に取り組む

それぞれ、どのようなところがポイントとなるのか解説しますので、チェックしてみてください。

4-1.データを一元的に管理できる体制を整える

小売業のDX推進を成功させるには、データを一元的に管理できる体制を整えることが欠かせません。DXの効果を出すためには、データの分析・活用が重要であり、多くのデータを集約しておくことで、精度の高い分析結果を得ることができるからです。

小売業のDXにおけるデータの活用例

  • 顧客の購入履歴からニーズを分析する
  • 販売実績や気象データなどを組み合わせて、需給予測を立てる
  • SNSのデータなどを分析し、今後のトレンドを予測する など

社内でデータの保管場所や入力様式などを統一し、管理担当者を決めて、一元管理するようにしましょう。

4-2. 組織全体で横断的に取り組む

DXは、組織全体で横断的に取り組むことで、成果を得やすくなります。部署ごと、業務ごとなど、組織内でバラバラに取り組んでいたのでは、デジタルツールを導入しただけになりがちだからです。

デジタル技術を取り入れることで、ビジネスモデルや組織のあり方まで変えることで、DX推進の成果は得られます。経営者自らがリーダーシップをとり、組織全体で協力して進めるようにしましょう。

ここまで記事を御覧いただいた上で、

「小売業DXを進めたいがどのアプローチ方法が合っているかがわからない」
「自分で調べて対応する時間がない」
「一旦、詳しい人の話を聞いたうえで判断したい」

とお考えの方は、ぜひ当社にサポートをお任せください。

5.まとめ

小売業は、DXを推進する必要性が高い業界です。

小売業でDXを推進する必要性が高い理由

既存のレガシーシステムだけでは、以下のような環境の変化に対応しきれないから

  • グローバル化やSNSなどによる市場ニーズの多様化
  • オンラインショッピング普及に伴う購入形態の変化
  • 人手不足による無人店舗などを導入検討する必要性

上記のとおり小売業界を取り巻く環境が大きく変わっており、既存のレガシーシステムだけでは、このような環境の変化に対応しきれないのが実情だからです。

小売業DXの代表的なアプローチ方法として、以下のようなものがあります。

小売業DXの具体的なアプローチ方法5つ

  • オンライン接客
  • ECサイトの自動化
  • AIによる需要予測
  • アプリの活用
  • 体験型の実店舗導入

小売業のDX成功事例は、多数あります。DXを推進する際は、事前に先行する事例を研究しておくことで、スムーズに進めやすくなるでしょう。

また、小売業のDXを成功させるには、以下のポイントを押さえることが大切です。

小売業のDXを成功させるポイント2つ

  1. データを一元的に管理できる体制を整える
  2. 組織全体で横断的に取り組む

小売業を取り巻く環境の変化は目まぐるしく、新たな課題も出てきていますが、対応次第では新たなビジネスチャンスにつなげることも可能です。デジタル技術を利活用し活路を見出すためにも、今回ご紹介した小売業のDXについての基礎知識を参考に、DXに取り組んでいきましょう。

この記事を書いた人:

PlariTown編集部